[意外と知らない気候変動] #2 日本の原発輸出の動向

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[意外と知らない気候変動] #2 日本の原発輸出の動向

アドボカシーチームの岩澤です。今回は原発輸出について紹介します。日本の政策、原子力産業の主体、事故時の責任、輸出先候補等について説明します。

 

原発輸出とは、「原子力協定を結んだ国に原子炉や配管、核物質などを輸出し、原発を建設すること」です。「相手が途上国の場合、運転技術や法整備も支援しなければならず、受注を勝ち取るには、メーカーのほか政府や電力会社の協力が必要」とされています。

日本政府は、原発輸出を成長戦略と位置づけています。首相官邸による「インフラシステム輸出戦略(平成28年度改訂版)」では、「原発や高速鉄道等、熾烈な競争を勝ち抜くべき個別案件について官民一体で取り組み、政府全体として支援していく」「原子力発電に関する協力に当たっては、核不拡散や、相手国の原子力政 策、相手国の日本への信頼と期待、二国間関係等を総合的に勘案し、個別具体的に検討した上で、原子力協定の締結を推進<外務省>」するなど、海外展開の支援をする立場を取っています。

原発輸出に関連する主体は、日立、東芝、三菱重工などの重電メーカーだけでなく、建設工事を請け負うエンジニアリング会社(例:日揮)、部材サプライヤー(例:日本製鋼所、IHI、JFEスチール、コベルコ)など多くの企業が関わっています。電力会社に関しては、原発事故後受注の主体となることは難しくなっており、プラントメーカー主体の受注活動が中心となっています。

事故時等の責任に関しては、原子力損害賠償制度が整っていれば、プラントメーカーは賠償金を負わされません。しかし、現地の運営会社に出資する場合は責任を負わされる可能性があるそうです(山口、2012、p90)。

輸出先候補としては、イギリス、トルコ、インド、リトアニア、フィンランド、ブルガリア、ベトナムが挙げられます。リトアニアでは2012年の国民投票で建設反対が過半数を占め計画が止まっていたものの、ウクライナ危機により、2014年7月に原発協議開始で合意しています。

このように、日本政府として原発輸出を推進しています。日本国内での増設は難しくなる中、原発輸出をすることで原子力関連人材の確保と研究開発の推進が可能となり、核廃棄物の処分法や高速炉等の研究開発を継続できるというメリットがあります。しかし、輸出に際しては事故・核拡散・テロ等のリスクや事業の不確実性などの問題点があります。特に相手国の政治的リスクや、建設期間の延長によるコスト増、廃棄物管理など、輸出においてもリスクがあることは確かです。


画像引用:資源エネルギー庁、「世界における原子力発電の位置づけ」cyj

画像引用:東京新聞

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参考文献
・山口聡、「福島第一原発事故後の原発輸出支援策」2012/01/08 国立国会図書館
・資源エネルギー庁、「世界における原子力発電の位置づけ」平成25年8月
http://www.cas.go.jp/…/s…/genshiryoku_kaigi/dai3/siryou1.pdf
・東京新聞、「国内各社、原発輸出を加速 相手国の安全性の担保なし」2016/01/26
http://www.tokyo-np.co.jp/…/…/201601/CK2016012602000121.html
・首相官邸、「インフラシステム輸出戦略(平成28年度改訂版)」2016/05/23
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai24/kettei.pdf
・朝日新聞、「原発輸出」2014/11/17
http://www.asahi.com/…/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E8%BC%B8%E5%87%BA…
・Zuu online、「原発銘柄への期待は高まるか? 日立の英国原発受注で加速するインフラ輸出」2016/02/17
https://zuuonline.com/archives/97708
・日本経済新聞、「日立、リトアニア政府と原発協議開始で合意」2014/07/30
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ3006P_Q4A730C1TJ1000/

Climate Youth Japan
Twitter:https://twitter.com/ClimateYouthJp(アカウント@ClimateYouthJp)
Blog:http://cyjclimatenegotiations.blogspot.jp/

【意外と知らない気候変動】 #1 「水」ってホントに当たり前?

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【アドボカシー/意外と知らない気候変動】 #1 「水」ってホントに当たり前?

こんにちは!アドボカシーチームの津田です!現在、京都大学地球環境学舎の修士1年で、再生可能エネルギーの普及政策について勉強しています。アドボカシーチームでは、今日から毎週月曜日に、気候変動について「意外と知らない豆知識」をピックアップしていきます!初回は僕が「気候変動と水」について紹介します(^^)

【普段、どれくらい水を使っていますか?】

一般的に、一人当たり1日に必要な水は2~3Lと言われています。これに対して、家庭で一人当たり1日に使用する水は約300Lです。全然違いますよね。これは主に風呂や洗濯で大量の水を使うのが原因です。私たちは生活の大部分を水に依存しているのです。私たちはこの水を「当たり前のもの」と考えていると思います。実際、日本で水が足りず命の危機に直面するようなことはほとんどないので、水の貴重さを実感することはほぼないです。

【この水は本当に「当たり前のもの」なの?】

現在、世界の約7億人が、水不足の状況で生活しています(国連水資源報告書)。世界人口が約70億人ということを考えると、10人に1人が水不足ということです。海外において水は「当たり前のもの」ではないのです。

【琵琶湖、呼吸できなくなる?】

日本においても、この当たり前は崩れつつあります。例えば、日本最大の湖「琵琶湖」は、近年温暖化の影響で「呼吸ができない」状態になっていると言われています。湖の生態系を保つために重要なのが、冬に冷たい空気と水が供給されることです。このことで地上近くの水が湖底まで流れ込み、湖内の水が循環するのです。これが冬に生じないと、水中に酸素が供給されず、湖内の生態系がボロボロになります。昨冬は温暖化の影響で、この大循環が冬の終わりの3月まで生じないという非常事態に陥りました。もしそのまま大循環が起こらなかったとしたら、湖は生き物が非常に住みずらい環境となるところでした。 また、温暖化による気候変動は、現在の乾燥地帯における干ばつをさらに加速させることになります。IPCC第5次評価報告書によると、アフリカの干ばつが発生しやすい地域では、気候変動によって干ばつの被害は悪化すると言われています(確信度が高い)。このような干ばつが、水不足による食糧危機や飢餓を引き起こすことは容易に想像できます。

【産業にも影響!?】

水不足は産業にも様々な影響を与えます。多量の水を必要とする産業としては、半導体、飲料、農業、電力、衣料品、バイオテクノロジー/医薬品、製紙、鉱業などが挙げられます。例えば半導体では、世界の14の大規模製造拠点のうち11がアジア太平洋地域に所在しますが、この地域での水問題は特に深刻といわれています。飲料では、ネスレ会長が「燃料よりも先に水を使い果たすだろう」と発言しています。 どうでしょう? このように、気候変動が進むと水は「当たり前のもの」ではなくなり、私たちの想像以上に様々な影響・被害を及ぼしうるということが、様々な面から指摘されています。「温暖化=気温上昇」という単純な図式で判断せず、より多くの視点から気候変動の影響を考えることが大切かもしれません。

参考文献  日本総研コラム『気候変動と水資源』 <https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=7113>

※琵琶湖に関する記述の中で、水質に関する誤った記載があったため、該当部分を削除致しました。大変申し訳ございません。

日立製作所 市川芳明氏インタビュー「パリ協定後の日立製作所の戦略」

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日立製作所 研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部 チーフアーキテクト室室長、国際標準化推進室主管技師長を務め、IEC(国際電気標準会議)TC111議長、ISO TC 268/SC1議長、ISO TC207エキスパートでもある市川芳明氏に、パリ協定後の日立製作所の戦略についてお話を伺いました。(日時:2016年4月19日、インタビュアー:岩澤宏樹)

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参考:日経ビジネスオンライン、「市川芳明 世界環境標準化競争」アクセス日2016/4/28
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111219/225381/?rt=nocnt

目次
・市川氏の職務内容
・日立製作所の今後の戦略
・パリ協定後の産業界の取り組み
・再生可能エネルギーと原子力発電
・国際標準化の事例

キーワード
日立グループ内の分野間連携、顧客協創、Society5.0、外部資金活用と外部参加の奨励、限界費用、仮想発電所、国際標準化

―市川氏の職務内容―
岩澤:本日は、このような大変貴重な機会を与えてくださり、誠にありがとうございます。早速なのですが、市川さんの普段の業務内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。

市川氏:現在、研究開発グループの社会イノベーション協創統括本部 チーフアーキテクト室室長を務めています。この部門は、日立グループ内の分野間連携を促進することを目的としています。各ユニットにおいて、それぞれその領域しか見られていない状況が多いため、このチーフアーキテクト室では分野間協力のオーガナイズを行っています。例えば、ヘルスケア(顧客管理)×エネルギー(省エネ)の連携が挙げられます。病院は非常に電力消費が大きいためです。日本はまだましで、海外において連携した導入を行うことで削減のポテンシャルがあります。例として、インドの病院に対し電力使用量削減を行うプロジェクトが計画中です。
 また、国際標準化に関しては、スマートシティ関連の標準化について取り組んでいます。(詳細は日経ビジネスをご覧ください。)これだけでなく、現在は国際標準化のノウハウがない他業界に対しても国際標準化策定の支援を行っています。


―日立製作所の今後の戦略―
岩澤:日立製作所の戦略をお聞きしてもよろしいでしょうか。

市川氏:現在日立製作所では、『社会イノベーション実現のために、9つの分野での技術革新を進めつつ、将来起こりうる社会課題を見据えた「ビジョンに基づく探索型基礎研究」(基礎探索)を行い、お客さまと共に課題を見出しソリューションを構築(顧客協創)すること』をビジョンに掲げています。技術革新、基礎探索、顧客協創の3点です。
 現在、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議において、”Society5.0”という言葉が正式に使われるようになりました。Industry4.0に加えて、社会課題をどのように改善するかを含めた一つ上のレイヤーがsociety5.0です。この取組を日立製作所として進めていこうと考えています。
 現在、多くの日本企業はIndustry4.0に振り回されてしまっていると思います。Smart manufacturingは、工場がIoTでつながり、情報が得られることが何につながるのか、明確化されていないことがあります。結果的に社会がよくなるのか,悪くなるのかは使い方次第ということになります。全ての高度なテクノロジーは,そのもの自体が人々の幸福を生むのではなく,適切な使われ方をきちっと社会ルール化することが前提条件です。
 これに対し、一つ上のレイヤーとして、みんなが幸せになるIndustry4.0を実現できる道(Society5.0)があります。たとえば、サプライチェーンにおけるHappiness分析です。一人当たりの出勤時間の多寡、生産量、企業の利益や給与等がデータとしてすべて把握できるようになることで、マクロとして働き方の公平性を実現できます。元請けが多く利益を得るのではなく、適切な対価を支払うことでサプライチェーン内での不公平性がなくなる可能性も大いにあります。このように、社会課題の改善が売り上げ増加につながることを目指しています。

岩澤:非常に面白い概念だと感じました。このような取り組み・考え方が広まれば社会は現状の課題を改善していけると強く感じます。
お話を聞いて、Society5.0はかなり規模が大きく一企業で達成することは難しいと感じたのですが、どのように実現していくのでしょうか。

市川氏:よい質問ですね。ドラッカーの著書にも書かれているように、イノベーションは”Small start”から始まるとされています。今までに全くやったことがないモデルであるため、小さな規模で開始することが大事です。一企業が社会の新たな価値観づくり(Society5.0)の土台を形成するためには、外部資金活用と外部参加を奨励することが手段として挙げられるでしょう。


―パリ協定後の産業界の取り組み―
岩澤:パリ協定により産業界は環境負荷低減の取り組みを強化させるのでしょうか。

市川氏:産業界はもちろん取り組みを強化させていきます。ただし、日本国内は限界費用が高く外国で減らしていくほうが効率的であるため、海外での取り組みが多くなると思います。環境負荷低減の取り組みが不十分である地域のほうが、投資額に対する温室効果ガス排出削減量が大きいためです。このような取り組みを支援するために日本政府はODAを活用した温室効果ガスの削減を目的とした海外支援を行っています。
 海外で日本の技術が活用された事例に関しては、イギリスの鉄道が挙げられます。軽量車体を特徴とするClass 395をはじめ,Class 800というバイモ-ド鉄道が約1兆円規模の事業として導入されます。エネルギー効率が良いこと,パンダグラフがない非電化区間においても電車を動かせることが特徴です。


―再生可能エネルギーと原子力発電―
岩澤:再エネ関連の特許は世界全体で約47000件のうち、日本は約55%保有しています。技術は持っているにもかかわらず、なぜ競争に勝てていないのでしょうか。

市川氏:特許数は多いですが、技術力においてはドイツや中国など他国に比べ互角です。やはり安価に作れることや地理的要因などがあげられるでしょう。

岩澤:再生可能エネルギーはなぜ国内で導入が進みづらいのでしょうか。

市川氏:価格を安くしていくのみしかビジョンを持てていないためだと思います。安く再生可能エネルギーを導入してもらうだけではだめで、再エネ導入が産業活性化にもつながるなど、地域全体をマクロでとらえ価値を提供する形が求められます。その点ではスマートシティのような概念に似ています。たとえば、素材産業が強い地域は、同時に電力消費が大きい。この電力を再エネで賄うことで電力料金低下につながるなど、付加価値の提供が必要です。

岩澤:原発の再稼働が進んだ場合、安定供給が実現しやすいため、スマートグリッドの導入は進まず再生可能エネルギーの導入は鈍化してしまう可能性があるのではないでしょうか。

市川氏:原発と再生可能エネルギーは分けて考えるべきです。なぜなら、原発は仮に再稼働するにしても絶対量は少ないためです。原発を再稼働させることで、火力発電への依存低下につながります。
また、現在仮想発電所 という考え方があります。スマートグリッドとも似た概念ですが、ICTによる管理を通じてベストミックスを図っていくべきだと思います。


―国際標準化の事例―
岩澤:国際標準化の具体事例についてお聞きします。JSA(日本規格協会)の講演資料(2011年7月14日)において、「欧米は仕組みで儲け、日本はモノづくりで儲けてきたが、現在は中国・韓国・インド等が成長し、日本の優位性が失われてきている。日本は今後仕組みづくり・競争の土台作りから参入すべき。方法として①技術は知財にする、②技術が優位になる社会の仕組みを標準化する、ことが挙げられる。」 と書かれています。この具体例である冷蔵庫の消費電力測定について詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。

市川氏:欧州の冷蔵庫は直接式(壁面を冷やす、霜がつく)であり、日本の冷蔵庫は間接式(冷風を流す、霜がつかない)となっています。消費電力の測定方法について、方式は違いますが、以前は国際標準として欧州方式の規格のみしかありませんでした。試験方法としては、ドアを閉めた状態で消費電力を測るもので、開け閉めは含まれていませんでした。しかし、何回もドアを開け閉めした場合、アジアなどの暑い地域では間接式のほうが、消費電力が少ないことがわかっています。そのため間接式の規格化を2008年末から開始し、アジア市場での販売促進につながることが期待されています。


岩澤:本日は、本当に貴重なお話を聞かせていただき、心から感謝申し上げます。自身の視野が広がり、お話を聞いているだけでわくわくするような気持ちになりました。本日は誠にありがとうございました。



プロフィール
市川芳明氏
1979年東京大学工学部機械工学科卒業。日立製作所入社後、原子力の保全技術及びロボティクス分野の研究に従事。1995年より環境保全分野のソリューションビジネスを立ち上げる。2000年初代の環境ソリューションセンタ長を経て、知的財産権本部国際標準化推進室主管技師長。東京工業大学、お茶の水女子大学、筑波大学の非常勤講師を経験し、現在は東京都市大学非常勤講師。IEC(国際電気標準会議)TC111議長、ISO TC 268/SC1議長、ISO TC207エキスパート、CENELEC(欧州電気標準委員会)オブザーバー、工学博士、技術士(情報工学)。 (参照:日経ビジネスオンライン)

岩澤宏樹(インタビュアー)
青山学院大学国際政治経済学部4年。Climate Youth Japan Advocacyチーム所属。気候変動政策に関する提言書を省庁に提出し、ユースとしての意見を表明している。宗像国際環境100人会議参加(2015年)。One Young World Ambassador (2015年バンコク大会参加)。地球人間環境フォーラムにて2014年にインターンを行い、パームオイルの生産による環境問題と人権問題(熱帯林伐採、劣悪な労働環境等)の文献調査を担当。現在は、エネルギー分野に問題意識を持ち、スマートグリッドなどICTを通じたエネルギー利用の効率化に関心を持つ。


参考資料
 市川芳明「国際標準化の新しい視点とアプローチ」2011、JSA、アクセス日 2016/4/26
http://www.jsa.or.jp/wp-content/uploads/koen110714-text3.pdf
 日本IBM、「仮想発電所(Virtual Power Plant)海外事例とIBMソリューション」アクセス日 2016/4/28
https://www-304.ibm.com/connections/blogs/ProVISION86_90/resource/no86/86_article5.pdf?lang=ja


読むとよい文献
 三宅孝之・島崎崇、『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』、2015、PHP研究所